「学校に行きづらい」「朝になると行き渋ってしまう」――そんなお子さんの様子に悩む保護者の方が増えています。そうした中で、検索でよく見かけるようになった言葉が「学びの多様化学校」です。以前は「不登校特例校」と呼ばれていたこの制度、実際にはどんな学校なのでしょうか。また、全国にどれくらいあるのかも気になるところです。実際、文部科学省の調査では、不登校の児童生徒数は12年連続で増加しています。その数は35万人を超えました(参考:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。そこで本記事では、学びの多様化学校の制度概要を解説します。あわせて、全国の設置状況や転入の流れ、実際の学校事例もまとめてご紹介します。
📝 この記事でわかること
- 学びの多様化学校(旧・不登校特例校)とはどんな学校か
- 全国の設置数と、地域別の設置状況の調べ方
- 公立・私立それぞれの費用感と、利用できる支援制度
- 転入・転籍の流れと、フリースクールとの違い
- 実際に学びの多様化学校に通う3つの事例
学びの多様化学校とは
学びの多様化学校とは、不登校の児童生徒の実態に合わせた特別な教育課程を編成できる学校のことです。つまり、通常の教育課程の基準にとらわれない、柔軟なカリキュラムが認められています。これは、文部科学大臣の指定を受けた学校に認められる制度です。以前は「不登校特例校」という名称でした。しかし、当事者や教職員から「特例という言葉に抵抗を感じる」といった意見が寄せられました。そのため、2023年8月31日に「学びの多様化学校」へと改称されました(参考:学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)について|文部科学省)。
通常の学校と異なり、年間の標準授業時数を下回るカリキュラムを組むことができます。また、教科の枠を超えた体験的な学習や、個別学習の時間を多く設けることも可能です。さらに、在籍すれば出席として扱われる点も大きな特徴です。これは、フリースクールなど民間の学びの場との大きな違いです。
学びの多様化学校の主な特徴
- 🕐 授業時間にゆとり――標準より少ない授業時数で、無理なく学べる
- 👥 個別・少人数指導――習熟度別やプリント学習など、一人ひとりに合わせる
- 🧑⚕️ 手厚い支援体制――スクールカウンセラーや支援スタッフが充実
評価方法も、出席や成績だけで判断しません。たとえば、子ども自身の変化や意欲を多面的に見る工夫がされている学校が多くあります。なお、設置形態は4つに分けられます。具体的には、独立した校舎を持つ「本校型」、既存校の敷地内に設置される「分校型」、既存校の教室を活用する「分教室型」、既存校の中に特別なコースを設ける「コース指定型」です。
全国の学びの多様化学校の設置状況
学びの多様化学校は年々増加しています。実際、令和6年度(2024年度)には全国35校でした。そして令和7年度(2025年度)には58校(公立37校・私立21校)まで増加しました(参考:学びの多様化学校、昨年度から6割以上増加し全国に58校|先端教育オンライン)。さらに2026年4月には新たに25校が開校しました。これにより、全国で84校(公立59校・私立25校)に達しています(参考:「学びの多様化学校」全国84校に、4月開校は25校…文科省|ReseEd)。
文部科学省は2027年度までに、全都道府県・全政令市での開校を目指しています。また、将来的には、全国300校規模への拡大も視野に入れています。
岩手県・群馬県・石川県・福井県・山梨県・長野県・和歌山県・鳥取県・広島県・徳島県・愛媛県・佐賀県・熊本県の13県には、設置校がありません。また、開校予定も発表されていません。ただし、お住まいの地域に学校がまだない場合でも、教育委員会に相談しておくと安心です。なぜなら、相談しておくことで、今後の開校情報をいち早く得られることがあるからです。
自分の地域に学校があるか調べるには
文部科学省のウェブサイトでは、学びの多様化学校の設置者(自治体・学校法人)の一覧が公開されています。そのため、都道府県別に確認することができます(参考:学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧|文部科学省)。ただし、更新のタイミングによって最新の開校情報が反映されていない場合もあります。そこで、お住まいの市区町村教育委員会の不登校・教育支援担当窓口に問い合わせると確実です。なお、「〇〇市 学びの多様化学校」で検索すると、自治体の公式ページが見つかることも多くあります。
気になる費用
公立の学びの多様化学校は、通常の公立校と同様に授業料はかかりません。ただし、教材費や行事費など、実費分のみの負担となるのが基本です。一方、私立の学びの多様化学校は学費が必要です。たとえば中学校では、年間授業料の目安が50万円台です。また、入学金や設備費が別途かかることもあります。そのため、私立を検討する場合は、自治体や学校独自の奨学金・就学支援制度が利用できるかどうかも、事前に確認しておくと安心です。
学びの多様化学校に通うには
学びの多様化学校は、在籍している学校からの転籍・転入という形で利用するのが基本です。ただし、条件は学校ごとに異なります。また、年齢や学年、お子さんの状態によっても変わってきます。そこで、まずはお住まいの自治体の教育委員会、または希望する学校に直接相談することが第一歩になります。なお、多くの学校が、見学会や説明会を定期的に開催しています。子どもの様子を見ながら、無理のないペースで検討するとよいでしょう。
フリースクール・オルタナティブスクールとの違い
どちらが良いかは、お子さんの状態や家庭の考え方によって変わります。たとえば、「学校という枠組みの中で、自分のペースを取り戻したい」という場合は、学びの多様化学校が合うこともあります。一方、「学校という形そのものから少し距離を置きたい」という場合は、フリースクールやオルタナティブスクールが合うこともあります。また、発達特性があるお子さんの場合は、人数規模や支援体制、感覚過敏への配慮なども気になるポイントです。そのため、見学を通じて、相性を確かめることをおすすめします。
事例で見る学びの多様化学校
八王子市立高尾山学園
公立として国内で初めて、情緒的な要因による不登校の児童生徒を対象に設置された小中一貫校です。「居心地の良さ」と「自由さ」を備えた環境づくりを大切にしています。そのため、年間授業時数を通常より2割ほど抑えた、柔軟なカリキュラムを編成しています。また、数学では習熟度別に2コースを設けています。さらに、教科書を使わず、生徒ごとにプリントを用意するなど、個に応じた指導が行われています。実際、2023年度の登校率は約73%にのぼります。転入前は長期欠席だった子どもが、自分のペースで通えるようになった例も報告されています(参考:「学びの多様化学校」が子どもの成長をそっと支えていた|東京新聞デジタル)。
星槎中学校・高等学校、星槎もみじ中学校など
星槎グループは、私立としての代表的な存在です。実際、全国58校(令和7年度時点)のうち、5校が学びの多様化学校の指定を受けています。一人ひとりの個性や特性に合わせた教育を方針に掲げています。また、国際交流やICTを活用した授業、体験学習やものづくりなどの活動を通じて、生徒それぞれの興味・関心を伸ばすプログラムを提供しています。なお、発達特性のある子どもへの理解や個別支援に力を入れている点も、保護者から注目されている理由のひとつです(参考:文部科学省指定 学びの多様化学校 星槎もみじ中学校)。
長崎市立桜馬場中学校「のぞみ教室」
2026年4月、長崎県内で初めての学びの多様化学校が開設されました。長崎市立桜馬場中学校の分教室「のぞみ教室」で、長崎市の市民会館内にあります(参考:県内初 不登校の中学生が学ぶ「学びの多様化学校」開設…“のぞみ教室”|KTNテレビ長崎)。1日の授業時間は、通常より2割短い4時間に設定されています。そのため、自分のペースで学べるよう工夫されているのが特徴です。在籍は桜馬場中学校のままです。そして、卒業時には、通常の中学校と同じ卒業資格が得られます。また、教室の床や椅子の色、キャスター付きの移動できる机など、子どもの心理的な負担を減らす内装にも配慮されています。なお、初年度は、1〜3年生の17人が利用を予定しています。このように、本校型・分校型の大規模な学校だけでなく、既存の校舎の一部を活用した分教室型のように、比較的小さな規模からスタートする学校もあります。
よくある質問
発達特性のある子どもも通えますか?
学びの多様化学校は、もともと不登校の児童生徒全般を対象としています。そのため、発達特性そのものを入学条件とはしていません。ただし、個別支援を重視する学校が多くあります。そのため、発達特性による学びにくさを抱えるお子さんが、結果的に過ごしやすくなっているケースも報告されています。気になる場合は、見学時に支援体制について具体的に質問してみるとよいでしょう。
「行き渋り」の段階でも相談できますか?
完全な不登校状態でなくても、行き渋りが続いている段階で教育委員会や学校に相談することは可能です。また、早めに情報収集をしておくことで、状態が変化したときにスムーズに動けるという声もあります。
転校してから合わなかったらどうなりますか?
転入してみてお子さんに合わないと感じた場合は、もとの在籍校に戻ることも可能です。また、フリースクールなど、別の選択肢に変更することもできます。なぜなら、「一度転入したら戻れない」という決まりはないからです。不安な場合は、事前に「合わなかった場合の流れ」も確認しておくと安心です。
友達関係や人数規模はどうなっていますか?
学びの多様化学校は、一般的な学校に比べて小規模な学級編成をとっているところが多くあります。そのため、一人ひとりの状況に合わせて、距離感を調整しやすい環境です。とはいえ、規模や雰囲気は学校ごとに異なります。そこで、見学の際には、クラスの人数や子ども同士の関わり方についても遠慮なく質問してみるとよいでしょう。
まとめ
学びの多様化学校は、「学校に戻る・戻らない」という二択ではありません。つまり、子どものペースに合わせた学びの形を選べる、選択肢のひとつです。全国的に設置が進んでいるとはいえ、まだすべての地域をカバーできているわけではありません。実際、行き渋りや発達特性に悩むご家庭にとって、選択肢が十分とは言えない地域もあります。そこで、お子さんに合う学びの場を探すときは、学びの多様化学校だけでなく、フリースクールやオルタナティブ教育など複数の選択肢を比べてみてください。そして、無理のない一歩を見つけていただければと思います。にじいろでは、今後も不登校やオルタナティブ教育に関する情報を発信していきます。

