子どもの感覚過敏とは?特徴や原因、家庭でできる関わり方を解説【専門家監修】

子どもの感覚過敏

近年、学校生活や日常生活の中で「子どもの感覚過敏」に悩む保護者が増えています。不安を抱える方も少なくありません。

「急に聞こえる同級生の大きな声がつらい」
「教室のガヤガヤした音が気になって集中できない」
「給食のにおいが苦手で教室に入れない」

このような子どもの姿を見て、悩んだことはありませんか。「どうしてこんなに嫌がるのだろう」「もしかして感覚過敏なのかな」と不安になりますよね。

感覚過敏は、周りからは見えにくい特性です。そのため、「気にしすぎ」「わがまま」と誤解されることもあります。しかし、子ども自身は強い不快感や不安を感じています。それは、私たちが想像する以上かもしれません。

子どもの困りごとを理解する第一歩は、「できない理由」を探すことではありません。「何がつらいのだろう」と感じ方に目を向けることが大切です。

この記事では、子どもの感覚過敏の特徴や原因を解説します。作業療法士の視点を交えながら、家庭でできる関わり方を分かりやすくご紹介します。

目次

感覚過敏とは、周りの人よりも刺激を強く感じやすい状態をいいます。音や光、におい、肌に触れる感覚、食べ物の食感などが対象です。

私たちは毎日、多くの刺激を受けて生活しています。しかし、脳はその中から情報を自然に整理しています。「今必要な情報」と「気にしなくてよい情報」に分けているのです。

一方、感覚過敏のある子どもは違います。この感覚を整理する働きに特性があります。そのため、周りの人が気にならない刺激でも、とても強く感じてしまいます。

例えば、教室で突然聞こえる大きな声が怖く感じることがあります。また、蛍光灯の光がまぶしくて集中できない場合もあります。給食のにおいで気分が悪くなることも少なくありません。

厚生労働省などの公的機関でも、発達特性の一つとして紹介されています。ただし、感覚過敏は発達障害の診断がある子だけに見られるものではありません。診断の有無にかかわらず見られる特性です。

私は作業療法士として、日々子どもたちと関わっています。その中でも、「チャイムの音が怖い」「教室のざわつきで疲れる」など、感じ方は一人ひとり異なります。

だからこそ、「困らせようとしている」と考えないことが大切です。「本人が困っている」という視点を持つことが、子どもを理解する第一歩になります。

感覚過敏の現れ方は、一人ひとり異なります。

同じ「音が苦手」といっても、すべての音が苦手な子もいれば、突然聞こえる大きな音だけが苦手な子もいます。

そのため、「感覚過敏だからみんな同じ」ということはありません

音に敏感

教室で急に聞こえる同級生の大きな声や、休み時間のガヤガヤした音、チャイム、体育館の反響音などが苦手で、耳をふさいだり、その場を離れたりすることがあります。

周りからは「少しくらい我慢すればいいのに」と思われるかもしれません。しかし、本人にとっては耐え難いほど大きく聞こえている場合があります。

光がまぶしい

教室の蛍光灯や強い日差しをまぶしく感じ、目を細めたり帽子をかぶりたがったりすることがあります。

においが気になる

給食や柔軟剤などのにおいが気になり、食事が進まなかったり気分が悪くなったりすることがあります。

肌触りに敏感

制服や体操服、服のタグ、靴下の縫い目、マスクの感触などが気になり、「この服しか着られない」という子どももいます。

食感が苦手

ネバネバしたものやパサパサしたものなど、特定の食感が苦手で食べられないことがあります。

好き嫌いと思われることもありますが、本人にとっては強い不快感を伴っていることがあります。

感覚過敏のある子どもを理解するときに大切なのは、「どうして嫌がるの?」ではなく、「何がつらいのだろう」と考えることです。

子どもが小さいうちは、自分の感じていることを言葉でうまく伝えられません。

だからこそ、保護者や先生が子どもの様子をよく観察し、「どんな場面で困っているのか」を知ることが支援の第一歩になります。

感覚過敏は、脳が感覚情報を整理する「感覚処理」の違いが関係していると考えられています。

作業療法では、この仕組みを「感覚処理」や「感覚統合」という考え方で捉え、一人ひとりに合った環境づくりや支援を行います。

例えば、

  • 小さな音でも大きく聞こえる
  • 制服のタグが痛みのように感じる
  • 教室のにおいで集中できない

このような状態は、本人の努力不足や育て方が原因ではありません。

また、「頑張れば慣れる」というものでもありません。

もちろん、成長とともに刺激への対処方法を身につけ、「以前より気にならなくなった」と感じる子どももいます。

一方で、大人になっても苦手な刺激は残ることがあります。

大切なのは、「どうしたらできるようになるか」だけではなく、「どうしたら安心して過ごせるか」という視点を持つことです。

① 無理に慣れさせようとしない

「頑張ればできるよ。」「みんな我慢しているよ。」

このような声かけをしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、感覚過敏によるつらさは、本人の努力だけでは乗り越えられないことがあります。

無理に慣れさせようとすると、不安や苦手意識が強くなってしまうこともあります。

まずは安心して過ごせる環境を整えることを優先しましょう。

② 苦手な刺激を知る

耳をふさいでいる姿を見ると、「聴覚過敏なのかな」と思うかもしれません。

しかし、大切なのは「どんな場面で耳をふさいでいるのか」を観察することです。

大人から声をかけられたときだけ耳をふさぐ子もいれば、教室で急に聞こえる同級生の大きな声やチャイム、掃除機の音など、特定の音が苦手な子もいます。

子どもは、自分の困りごとをうまく言葉で伝えられないことがあります。

だからこそ、「どうして耳をふさいでいるのだろう」と行動の背景を考えることが、その子に合った支援につながります。

③ 安心できる環境をつくる

イヤーマフを使う、服のタグを切る、座席を工夫するなど、小さな配慮で過ごしやすくなることがあります。

世界保健機関(WHO)のICF(国際生活機能分類)では、障害や困りごとは本人だけの問題ではなく、「環境との関わり」の中で生じると考えられています。

そのため、子どもを変えようとするだけではなく、環境を整えることも大切な支援です。

④ 子どもの気持ちを言葉にする

「急に大きな声が聞こえてびっくりしたね。」

「今日は教室の音が大きく感じたんだね。」

このように気持ちを代弁してもらえると、子どもは「分かってもらえた」という安心感を得られます。

その積み重ねが、自分の気持ちを伝える力にもつながっていきます。

⑤ 必要に応じて専門家へ相談する

子どもの困りごとが続くと、「親の育て方が悪いのでは」と悩んでしまう保護者も少なくありません。

しかし、感覚過敏は育て方が原因ではありません。

困りごとが続く場合は、学校の先生や作業療法士、地域の相談機関などと一緒に考えていくことも大切です。

文部科学省も、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じて、家庭と学校が連携しながら支援していくことの重要性を示しています。

保護者だけで頑張る必要はありません。

子どもが安心して過ごせる方法を、一緒に見つけていきましょう。

わがままとの違いは?

子どもが耳をふさいでいる姿を見ると、「わがままなのかな」「聴覚過敏なのかな」と迷う保護者も多いのではないでしょうか。

まず大切なのは、すぐに決めつけないことです。

子どもがどのような場面で耳をふさいでいるのかを、ぜひ観察してみてください。

例えば、大人から注意されたときだけ耳をふさぐ子もいれば、教室で急に聞こえる同級生の大きな声やチャイム、掃除機の音など、特定の音が苦手な子もいます。また、人によっては生活の中にあるさまざまな音が大きく聞こえ、強い苦痛を感じている場合もあります。

子どもが小さいうちは、自分の感じていることを言葉でうまく伝えられません。

だからこそ、「どうして耳をふさいでいるのだろう」と子どもの行動をよく観察することが大切です。

「わがままだから」と考えるのではなく、「何か困っていることがあるのかもしれない」という視点を持つことで、その子に合った支援につながることがあります。

成長すると治りますか?

感覚過敏は、成長とともに気にならなくなる人もいます。

子どもの成長や経験を重ねる中で、自分に合った対処方法を身につけたり、感覚の受け取り方が変化したりすることで、「以前ほど気にならなくなった」と感じる人も少なくありません。

一方で、成長しても苦手な刺激は残り、周囲の理解や配慮が必要な場合もあります。

大切なのは、「治るかどうか」ではなく、その子自身が安心して過ごせる方法を一緒に見つけていくことです。

学校にはどのように伝えたらいいですか?

学校へ相談するときは、「この場面ではこうしてください」とお願いするだけではなく、まずは学校での様子を教えてもらうことをおすすめします。

例えば、

「家ではこのような様子があります。学校ではどのように過ごしていますか?」

「一緒に、その子に合った方法を考えていただけるとうれしいです。」

というように伝えると、先生も状況を共有しやすくなります。

同じ子どもでも、家庭と学校では見せる姿が異なることがあります。

文部科学省も、保護者と学校が連携しながら、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を進めることの重要性を示しています。

子どもにとってより良い環境をつくるためには、「お願いする」だけではなく、「一緒に考える」という姿勢が大切です。

感覚過敏のある子どもの中には、教室の大きな声やガヤガヤした音、給食のにおい、人が多い環境などが負担となり、学校生活が難しくなることがあります。

もちろん、感覚過敏だけが不登校の原因ではありません。しかし、学習環境がその子の特性に合っていないことが、学校へ行きづらさにつながる場合もあります。

近年では、学校だけではなく、ホームスクーリング(自宅学習)やオンラインスクールなど、多様な学び方を選択する家庭も増えています。

大切なのは、「学校へ戻ること」だけを目標にするのではなく、その子が安心して学び、自分らしく成長できる環境を考えることです。

▶︎ 関連事例|子どもたちが見つけた「自分らしく学べる場所」

感覚過敏や学校生活への不安から、学ぶ環境を見直した子どもたちもいます。一人ひとりに合った環境を選ぶことで、安心して学び、友達とのつながりや新しい挑戦につながった事例があります。

感覚過敏は、周りからは見えにくい特性です。

だからこそ、「どうしてできないの?」ではなく、「何がつらいのかな?」という視点を持つことが、子どもを理解する第一歩になります。

保護者だけで頑張る必要はありません。

学校や専門機関と連携しながら、その子に合った方法を一緒に考えていきましょう。

子どもが安心して自分らしく過ごせる環境をつくることが、何より大切な支援につながります。


【監修】佐藤 仁美(作業療法士)

児童発達支援・放課後等デイサービスで、発達に特性のある子どもへの支援に従事。現在はNIJINアカデミー東金校の教室長として、不登校の子どもたちの学びを支援している。
「子どもを変える」のではなく、「子どもが安心して過ごせる環境をつくること」を大切に、一人ひとりに寄り添った支援を実践している。

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