夏休み明けに「学校行きたくない」と訴える子どもは、決して珍しくありません。実際、文部科学省の最新調査でも、小・中学校の不登校児童生徒数は35万人を超えました。しかも、12年連続で増加しています(参考:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。
新学期が始まる不安や緊張、生活リズムの乱れ、友人関係の不安など、理由はさまざまです。さらに近年は、「行き渋り」の背景にある発達特性や起立性調節障害といった身体的要因にも注目が集まっています。
📝 この記事でわかること
- 夏休み明けに「学校行きたくない」と感じる理由(発達特性・身体症状も含む)
- 子どもへの具体的な対処法と、話を聞くときのポイント
- 休ませるべきかどうかの判断基準と、特に注意したい時期
- 新学期に向けた事前準備と、家庭でできるサポートの実例
- フリースクールやオルタナティブ教育など、学校以外の選択肢
夏休み明けに「学校行きたくない」と感じる理由とは?
夏休み明けに「学校行きたくない」と感じる子どもたちには、いくつかの共通する理由があります。代表的な6つを見てみましょう。
1. 生活リズムの乱れ
夏休み中は遅寝遅起きになりがちで、生活リズムが崩れてしまうことが多いです。そのため新学期が始まると、朝早く起きることが難しくなります。結果として、学校に行くこと自体が億劫になるのです。
2. 宿題や課題が終わっていない
夏休みの宿題や課題が終わっていないと、新学期が始まる前に大きなストレスとなります。なぜなら、未完了の宿題があることで学校に行くこと自体がプレッシャーになるからです。その結果、「行きたくない」と感じる原因になります。
3. 人間関係の不安
夏休みが長いと友達と会う機会が減り、友人関係に不安を感じることがあります。そのため新学期が始まると、再び友達と会うことに緊張や不安を感じる子どもも少なくありません。具体例としては、次のようなものがあります。
- 友達とのトラブル:友達との間で何か問題を抱えている場合、学校に行くのが億劫になることがあります。
- いじめ:いじめを受けている場合、学校に行くのがとても辛い状況です。
- 先生との関係:特定の先生との関係がうまくいっていない場合、学校に行くのが嫌になることがあります。
- 部活動の悩み:部活動でうまくいかないことや、人間関係で悩んでいる場合、学校に行くのが億劫になることがあります。
4. 発達特性や感覚過敏による「行き渋り」
近年の調査では、不登校のきっかけとして発達特性が注目されています。具体的には、小学生では音や光、人混みなどへの「感覚過敏」が、中学生では「体調の不安定さ」が挙げられるケースが多いと報告されています(参考:ベネッセ教育情報「不登校のきっかけ、小学生は『感覚過敏』中学生は『体調の不安定』」)。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHDといった発達特性がある子どもは、集団生活や環境の変化への適応に時間がかかりやすい傾向があります。そのため、夏休み明けの環境の切り替わりが大きな負担になることがあります。だからこそ、「わがまま」や「甘え」ではなく、特性に合わせた配慮が必要なサインだと捉えることが大切です。
5. 起立性調節障害などの身体症状
朝起き上がれない、立ちくらみがする、強い倦怠感があるといった症状は、思春期の子どもに多い「起立性調節障害」の可能性があります。これは自律神経の乱れによる身体的な症状で、不登校の子どもの3〜4割に関係するともいわれています。つまり、本人の意志や努力の問題ではありません。だからこそ「気持ちの問題」と決めつけず、まずは小児科や心療内科に相談することが重要です。
6. 学校での過去の嫌な経験・精神的な疲れ
過去に学校で嫌な経験をした子どもたちは、夏休み明けにその記憶が蘇り、再び学校に行くことに抵抗を感じることがあります。また、夏休み中にイベントや旅行で忙しかった場合も注意が必要です。楽しい時間を過ごした分、精神的に疲れてしまい、新学期が始まると同時にエネルギーが不足していることもあります。
「学校行きたくない」と言う子どもへの3ステップ対処法
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。まずは次の3ステップを意識してみてください。
ステップ1:子どもの話をじっくり聞く
まずは子どもの話を遮らず、最後まで聞いてあげましょう。そのうえで、「学校が嫌なのはつらいね」「それは大変だったね」など、共感の言葉をかけてください。そうすることで、子どもは自分の気持ちを受け入れてもらえたと感じ、本当の理由を話しやすくなります。
なぜ行きたくないのか、具体的な理由を聞きましょう。友達関係、勉強、先生との関係、部活動、身体の不調など、何に困っているのかを把握することが大切です。
「なんとなく行きたくない」と理由をはっきり言えない子どももいます。この気持ちは決して軽視すべきものではありません。背景には、何らかの理由や不安、あるいは発達特性・身体症状が隠れている可能性があるからです。まずは「学校に行くのがつらいんだね」と寄り添い、無理強いしないことが大切です。そして、解決策が見つからなければ、ひとまず休ませるのも選択肢の一つです。
ステップ2:休ませるかどうかを判断する
「学校に行きたくない」と子どもが言った場合、必ずしも休ませなければならないわけではありません。お子さんの状況や具体的な理由によって判断する必要があります。
夏休み明けは、子どもの自死が増える傾向があります。なかでも9月1日は1年で子どもの自殺が最も多い日とされています(参考:内閣府「平成27年版自殺対策白書」)。実際、令和6年の児童生徒の自殺者数は527人(令和5年確定値513人)と過去最多となる見込みです。だからこそ、まずはこの時期、お子さんが無事に過ごせるかどうかを最優先に考えましょう。
文部科学省の令和6年度調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は35万3,970人で過去最多となりました。12年連続の増加で、小学校13万7,704人、中学校21万6,266人という内訳です。さらに10年前と比較すると、小学生は5.5倍、中学生は2.2倍に増加しました(出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。つまり、今の学校生活に窮屈さを感じる子どもがいても不思議ではありません。学校へ行くことだけが、唯一の選択肢ではないのです。
以下は一般的な目安です。あくまでもお子さんの状況をよく見て判断してください。
休ませるべきケース
- 身体的な不調:高熱や体調不良、起立性調節障害の症状など、明らかに学校に行くのが難しい状態の場合。
- 精神的な負担:いじめを受けていたり、強いストレスを感じている場合。
- 家庭環境の変化:家庭内で大きな変化があり、それが学校生活に影響している場合。
様子を見て、休ませることを検討するケース
- 生活リズムの乱れ:夏休み明けで生活リズムが乱れている場合。
- 人間関係の悩み:友達との関係がうまくいっていない場合。
- 勉強の不安:新しい学年や教科に不安を感じている場合。
休ませない方が良いケース
- 少しの困難ですぐに諦めてしまう性格:少しの困難を乗り越える経験を積ませる必要がある場合。
休ませる場合は、なぜ休ませるのかをお子さんに説明しましょう。そのうえで、休んでいる間も学習習慣や生活リズムを意識させながら、学校の先生と連携を取ることが大切です。
一方、休ませない場合は、無理強いせず理由を聞いて共感することが第一です。そして、少しずつ学校へ行く時間を増やすなど、段階的に対応していきましょう。
ステップ3:必要に応じて専門家に相談する
子どもが長期間にわたって「学校に行きたくない」と感じている場合は、専門家への相談も検討しましょう。たとえば、スクールカウンセラーや精神科医に相談する方法があります。また、発達特性が疑われる場合は、児童精神科や発達外来に相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けられます。
新学期前にできる!気持ちを和らげる4つの準備
1. 生活リズムを整える
夏休み中に乱れた生活リズムを整えるために、新学期が始まる1週間前から早寝早起きを心がけましょう。軽い運動や三食バランスの取れた食事など、健康面のサポートも大切です。
2. 宿題を計画的に終わらせる
宿題や課題を毎日少しずつ進めることで、夏休みの終わりに焦ることなく、安心して新学期を迎えることができます。
3. ポジティブな学校生活のイメージを作る
友達との楽しい時間や好きな教科の話をするなど、学校の良い面を伝えることで、前向きな気持ちを持たせることができます。
4. 2学期に向けて短期目標を設定する
1週間や1ヶ月単位の短期目標を、親子で話し合って設定しましょう。そうすることで達成感とやる気を引き出し、学校へ行くモチベーションを高めることができます。
親ができるサポートの実例
事例:子どもの様子の変化に気づいたAくんのケース
「学校行きたくない」と言ったAくん。ママは、Aくんが学校に通えている間も以前よりイライラしていることが増えていると感じていたそうです。そこで、普段の様子に前の年と比べて違いはなかったか、振り返ってみました。学校のある日とない日で態度に差はなかったかを確認するのも、一つの方法です。
悩み別:登校するための具体的な解決策
以下はあくまでも一般的な解決策です。お子さんに合ったものを一緒に考えてあげてください。
友達関係で悩んでいる場合
- 友達との関係について具体的に話を聞き、共感する。
- 学校の先生やスクールカウンセラーに相談し、状況を把握してもらう。
- 他の友達との交流の機会を増やす。
勉強が不安な場合
- 苦手科目の克服のために、家庭教師や塾を検討する。
- 一緒に勉強する時間を設ける。
- 小さな目標を立て、達成できたときに褒める。
先生や学校全体が怖いと感じている場合
- 担任の先生に相談し、授業中の席替えなどを検討してもらう。
- 教科書ワークやオンライン学習サービスを利用し、自分のペースで学習を進める。
- 学校に行かなくても良い日を作り、好きなところや楽しいことを思い出させる。
学校・専門機関との連携先
- 担任の先生:お子さんの状況を伝え、学校での様子や支援してもらえることを相談しましょう。
- スクールカウンセラー:学校にいる場合は活用しましょう。
- 児童相談所・心療内科:必要であれば、他の専門機関にも相談しましょう。
学校以外の選択肢:フリースクール・オンライン学習・オルタナティブ教育
フリースクールやオンライン学習、オルタナティブスクールは、子どもが学びを続けるための柔軟な選択肢です。たとえば、学校に行くことが難しくなった場合でも、学校に通っていると認められる「出席認定」をしてくれるフリースクールもあります。
フリースクールには「居場所」としての機能と「学校に代わる教育機関」としての機能があり、位置づけはそれぞれ異なります。そのため、お子さんの状態や目的に合わせて、よく確認してから選ぶことが大切です。なお、発達特性のある子どもに合わせた個別カリキュラムを用意するオルタナティブスクールも増えています。
Aくんのママは、フリースクール情報をインターネットで探し、体験入学でAくんに合ったところを選んだといいます。まずは地域のフリースクールやオンラインフリースクールを探してみてください(参考:全国のフリースクールを探す|にじいろ、不登校に発達障害が多い理由とは?親ができる環境選び)。
家庭でできること:楽しみ・休養・相談先・親のケア
- 日常の楽しみを見つける手助け:子どもが学校以外の楽しみを見つけられるよう手助けしましょう。
- 家族で楽しい時間を過ごす:多くの子どもは「学校に行かなければならない」「休むのは罪だ」と思い込んでいます。しかし、学校という環境が合っていないだけで、お子さんに罪はありません。だからこそ、家族で楽しい時間を過ごし、自信を取り戻すことが大切です。それが結果的に、学校へ通う力につながることもあります。
- 適切な休養を取らせる:夏休み中に疲れている場合は、しっかりと休息を取らせ、体力と精神力を回復させましょう。
- 信頼できる相談先を教える:親以外にも相談できる信頼できる大人がいると、子どもは安心感を持つことができます。
忘れないでほしいこと:親御さん自身がリラックスする
「学校に行きたくない」気持ちは、一朝一夕に解決できるものではない場合があります。そのため、お子さんのペースに合わせると、親の計画通りに進まないこともあるでしょう。そんなときこそ、親自身の心身の健康を保つことが、子どもへの良いサポートにつながります。たとえば、同じような経験をした人に相談する、子育てのサポートグループに参加する、趣味の時間を持つなど、長期的な視点で焦らずリラックスしましょう。
よくある質問
不登校の子どもは実際どれくらいいるの?
文部科学省の令和6年度調査によると、小・中学校の不登校児童生徒数は35万3,970人で過去最多、12年連続の増加です。高校生の不登校生徒数も増加傾向にあります。決して「うちの子だけ」ではありません。
行き渋りと不登校の違いは?
「行き渋り」は、登校に抵抗を示しながらも完全には休んでいない状態を指すことが多いです。不登校の前兆として現れるケースもあります。背景には、生活リズムや友人関係に加え、発達特性や起立性調節障害といった身体的要因が隠れている場合も少なくありません。だからこそ、早期に気づき、無理強いせず対応することが大切です。
9月1日に特に注意した方がいいのはなぜ?
内閣府の自殺対策白書をはじめとする複数の調査で、長期休業明けに18歳以下の自殺が増える傾向が示されています。なかでも9月1日は、年間で最も子どもの自殺が多い日とされています。だからこそ、新学期前後は特に、子どもの様子を注意深く見守りましょう。
まとめ:夏休み明けの「学校行きたくない」に親ができること
夏休み明けに子どもが「学校に行きたくない」と話すのは、決して珍しいことではありません。大切なのは、子どもの気持ちを否定せず、落ち着いて話を聞くことです。そのうえで、具体的に何が嫌なのか、どのようなことを不安に感じているのかを丁寧に聞き出しましょう。最後に、共感の言葉をかけて、安心できる雰囲気を作ってあげてください。
その背景には、生活リズムの乱れや人間関係の悩みだけでなく、発達特性や起立性調節障害といった身体的・特性的な要因が隠れていることもあります。そのため、生活リズムの改善、学校との連携、家庭でのサポートといった具体的な対応が欠かせません。さらに、フリースクールやオルタナティブ教育といった学校以外の選択肢を知っておくことも、親子の安心につながります。
まずは夏休み明けの1日を、お子さんが無事に過ごせるように。そして、お子さんに合った学びの場を、焦らず一緒に探していきましょう。

