「家ではあんなにしゃべるのに、学校では一言も話せないんです」
場面緘黙の子どもを持つ保護者から、よく聞く言葉です。
学校では固まってしまう。
友達とも話せない。
先生からも理解されない。
そんな姿を見ると、保護者は不安になります。
「このまま社会に出られるのだろうか」
「将来は大丈夫なのだろうか」
しかし私は、数多くの場面緘黙の子どもたちと出会う中で、むしろ逆のことを感じています。
場面緘黙の子どもたちは、「話せない子」ではありません。
そして将来の可能性が低いわけでもありません。
今回は、学校現場とオルタナティブスクール運営の両方に携わってきた立場から、場面緘黙と学校、そして未来のキャリアについてお話しします。
全国750名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
結論:場面緘黙は能力の問題ではない
まず結論からお伝えします。
タツロー校長場面緘黙は、「話す能力がない」ということではありません。
知能が低いわけでもありません。考える力が弱いわけでもありません。
むしろ、発想力が豊か・感受性が高い・ユーモアがある創造力がある
そんな子どもたちが数多くいます。
問題は能力ではなく、「特定の環境で話せなくなってしまうこと」です。
私はこれを、能力の問題というよりも脳のエネルギー配分の違いだと考えています。


特徴①:家では驚くほどよくしゃべる
場面緘黙について誤解されやすいのがここです。
学校では全く話せなくても、家ではまるで別人のような子がいます。
兄弟と大笑いしている。好きなことになると止まらない。歌ったり踊ったりする。
保護者が動画を見せてくれると、「本当に同じ子ですか?」
と思うこともあるほどです。
つまり、話せないのではなく、「話せる環境が限られている」のです。
特徴②:学校では身体まで固まることがある
場面緘黙は、単に声が出ないだけではありません。
学校では、
- 表情が固まる
- 動きが少なくなる
- 視線を合わせられない
- 反応できない
といった状態になることがあります。
周囲からは、
「おとなしい子」
「消極的な子」
と見られがちですが、本人の中では大きな緊張や不安が起きています。
そして残念ながら、この状態を理解されないまま傷つく子どもも少なくありません。


なぜ起きる?脳の「危険アラーム」の仕組み
脳には「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分があります。


危険を察知するセンサーのような役割です。
例えば、
- 大勢の前で急に話を振られた
- 初めての場所に行った
- 緊張する発表がある
そんな時に働きます。
誰でも緊張はします。
しかし場面緘黙の子どもは、この危険アラームが非常に敏感だと言われています。
周囲から見れば何でもない場面でも、脳が「危険だ」と判断してしまう。
すると、
話す、笑う、動く
といった行動に使うエネルギーが不足し、身体が固まってしまうのです。
つまり本人の努力不足ではありません。
生存本能が強く働いている状態なのです。
場面緘黙と不登校の関係
私は場面緘黙と不登校には深い関係があると考えています。
なぜなら学校は、
「同質性×口頭コミュニケーション」を中心に作られた環境だからです。
同じ年齢。同じ教室。同じ学習内容。
そして発表や会話を前提とした学び。
場面緘黙の子どもにとっては、毎日が強い緊張状態になることもあります。
その結果、
疲れ切ってしまう。自己肯定感が下がる。学校へ行けなくなる。
こうした流れは決して珍しくありません。


学校だけが人生ではない
ここで保護者に知ってほしいことがあります。
それは、
学校でうまくいかないことと、人生でうまくいかないことは全く別だ
ということです。
学校は社会の一部に過ぎません。
社会には、
- スポーツで表現する人
- 文章で伝える人
- 絵で伝える人
- 音楽で伝える人
- プログラミングで価値を生み出す人
など、さまざまなコミュニケーションがあります。
学校の評価軸だけで、その子の価値は決まりません。
場面緘黙の子が活躍しやすい学び方・キャリア
NIJINアカデミーでも、場面緘黙の子どもたちが活躍しています。
マイクはオンにできない。でもチャットでは誰よりも速く意見を書く。
独創的なアイデアを次々出す。作品づくりで才能を発揮する。
そんな姿を何度も見てきました。
場面緘黙の子どもたちは、
「口頭コミュニケーション以外の表現方法」を育てる機会が多いとも言えます。
だからこそ、
- クリエイター
- イラストレーター
- ライター
- エンジニア
- デザイナー
など、多様なフィールドで活躍する可能性があります。
大切なのは、「学校に合わせること」ではなく、
「自分に合った場所を見つけること」です。


保護者に伝えたいこと
もし我が子が場面緘黙だったとしても、
「学校で話せるようにしなければ」だけを目標にしないでください。
もちろん支援は大切です。
しかし同時に、
- この子はどんな環境で輝くのか
- どんな表現方法が得意なのか
- どんな学び方が合っているのか
にも目を向けてほしいと思います。
場面緘黙は、その子の可能性を決めるものではありません。
学校という環境との相性によって見えている一面に過ぎないのです。
子どもの才能は、場所を変えることで大きく花開くことがあります。
だからこそ私たちは、「学校に合わせる教育」ではなく、「子どもに合った環境を選べる教育」を広げていきたいと考えています。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
星野達郎校長が、場面緘黙の特徴や不登校との関係、そしてこれからの時代の学び方・キャリアについて動画で詳しく解説しています。
保護者の方はもちろん、教育関係者の方にもぜひご覧いただきたい内容です。


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