「何度言っても話を聞いてくれない。」
「宿題を始めても、すぐに別のことに気を取られてしまう。」
「忘れ物やケアレスミスが多い。」
このような子どもの様子に、「集中力がないのかな」と感じたことはありませんか。
実は、こうした困りごとの背景には**「注意機能」**が関係していることがあります。
前回の記事では、聞き取り困難症の背景には、耳の聞こえだけでなく「必要な音に注意を向ける力」が影響している場合もあることをご紹介しました。
注意機能は、勉強だけでなく、遊びや友達との関わり、日常生活など、子どものあらゆる場面で必要となる大切な力です。
この記事では、注意機能とはどのような働きなのか、子どもによく見られる特徴や、家庭でできるサポートについて分かりやすく解説します。
注意機能とは

注意機能とは、必要な情報に意識を向け、それを保ち、状況に応じて切り替えたり、複数のことを同時に行ったりする脳の働きのことです。
「集中力」と似た意味で使われることもありますが、実際には集中力よりも幅広い働きを指します。
例えば学校では、
- 先生の話を聞く
- 黒板を見ながらノートを書く
- 宿題を最後まで取り組む
- チャイムが鳴ったら次の活動へ切り替える
このような毎日の行動にも、注意機能が大きく関わっています。
注意機能がうまく働かないと、「やる気がない」「落ち着きがない」と誤解されてしまうことがありますが、本人も「やろうと思っているのにできない」と困っている場合は少なくありません。
注意機能には4つの働きがあります
1.選択的注意
選択的注意とは、多くの情報の中から必要な情報だけに注意を向ける力です。
例えば教室では、先生の声だけでなく、友達の話し声や廊下の音、エアコンの音など、さまざまな音が聞こえています。
その中から先生の話だけに集中する力が、選択的注意です。
この力が弱いと、周囲の刺激が気になり、授業の内容が頭に入りにくくなることがあります。
2.持続的注意
持続的注意とは、一つのことに注意を向け続ける力です。
例えば、
- 宿題を最後まで取り組む
- テストを解き続ける
- 本を読み続ける
といった場面で必要になります。
途中で気が散ってしまったり、最後まで取り組めなかったりする場合は、この働きが影響していることがあります。
3.転換性注意
転換性注意とは、注意を別のことへ切り替える力です。
例えば、
- 遊びから勉強へ切り替える
- 算数から国語へ移る
- 作業を止めて先生の話を聞く
など、学校生活では何度も必要になる力です。
切り替えが苦手だと、「まだ遊びたい」「いつまでも同じことを続けてしまう」といった様子が見られることがあります。
4.分配性注意
分配性注意とは、二つ以上のことに注意を配る力です。
例えば、
- 黒板を見ながらノートを書く
- 先生の話を聞きながらメモを取る
- 体育で説明を聞きながら動きを確認する
など、学校生活では欠かせない力です。
この働きが苦手だと、「聞く」と「書く」を同時に行うことが難しく感じることがあります。
注意機能が弱いと、どんな困りごとがある?
注意機能に特性がある子どもは、次のような困りごとが見られることがあります。
- 話を最後まで聞けない
- 忘れ物が多い
- ケアレスミスが多い
- 指示を聞き漏らしてしまう
- 周囲の音や動きが気になる
- 宿題がなかなか終わらない
- 声をかけられても気づきにくい
これらは「頑張っていない」のではなく、注意をコントロールすることに難しさがあるために起こる場合があります。
注意機能に特性がある子どもにおすすめの学習法
注意機能に特性がある子どもは、「集中しなさい」と声をかけるだけでは改善しないことがあります。
大切なのは、集中しやすい環境や学び方を工夫することです。
1.学習時間は短く区切る
30分や1時間続けて勉強するよりも、15〜20分程度学習したら5分休憩するなど、短い時間で区切る方が集中しやすい子どももいます。
タイマーを使って「ここまで頑張ろう」と見通しを持たせるのもおすすめです。
2.やることを見える化する
「宿題をやってね」と伝えるだけでは、何から始めればよいか分からないことがあります。
例えば、
- 漢字10分
- 計算10分
- 音読5分
のように、やることを紙に書き出すと、次に何をすればよいかが分かりやすくなります。
3.学習する環境を整える
テレビやゲーム、スマートフォンなど、注意が向きやすいものが近くにあると集中しにくくなります。
学習するときは机の上を整理し、必要なものだけを置くことで、気が散りにくい環境をつくることができます。
4.「聞くだけ」ではなく「見る」を取り入れる
口頭で説明を聞くだけでは理解しづらい子どももいます。
図やイラスト、チェックリスト、色分けなど、目で見て理解できる教材を取り入れることで、学習内容を整理しやすくなります。
5.体を動かしながら学ぶ
長時間座っていることが負担になる子どももいます。
計算カードを並べる、ホワイトボードに書く、立って音読するなど、少し体を動かしながら学ぶことで集中しやすくなることがあります。
6.成功体験を積み重ねる
難しい課題から始めるのではなく、「できる問題」から取り組むことで、「できた」という経験を積み重ねることが大切です。
学習への自信がつくことで、「またやってみよう」という気持ちにつながります。
▶︎まとめ
注意機能は、「集中力がある・ない」という単純なものではありません。
必要なことに注意を向けたり、それを続けたり、切り替えたりする、学習や生活を支える大切な認知機能です。
子どもの「話を聞いていない」「落ち着きがない」という行動の背景には、注意機能の特性が関係していることもあります。
子どもを責めるのではなく、その子に合った環境や関わり方を見つけることが、安心して学び続けられる第一歩になります。
次回は、「聞いたのに覚えられない」「説明を聞いても途中で分からなくなる」といった困りごとに関わるワーキングメモリについて、分かりやすく解説します。

監修
佐藤 仁美(作業療法士)
作業療法士として10年以上にわたり、児童発達支援・放課後等デイサービスで発達に特性のある子どもたちへの支援に携わる。現在はNIJINアカデミー東金校の教室長として、不登校の子どもたちの学びや保護者支援にも取り組んでいる。
専門は、発達支援、感覚統合、認知機能(注意機能・ワーキングメモリ・実行機能など)の評価と支援、学習支援。医療と教育の両方の視点を活かし、一人ひとりの特性に合わせた支援を実践している。
この記事について
本記事は、国内外の公的機関(世界保健機関〈WHO〉、文部科学省、厚生労働省など)が公表している情報や、認知機能に関する研究知見を参考にするとともに、作業療法士としての臨床経験を踏まえて執筆・監修しています。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や治療を目的としたものではありません。お子さまの発達や学習について気になることがある場合は、医療機関や教育機関、専門機関へご相談ください。

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