聞き取り困難症とは?子どもの特徴と学習しやすくなる工夫を解説

「何度も聞き返す」「話を聞いていないように見える」「教室では先生の話が分からない」

このような様子があると、「集中力が足りないのかな」「もっとしっかり聞けばいいのに」と感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、中には聞き取り困難症(APD)Listening Difficulties(LiD)と呼ばれる状態が関係している場合があります。

聞き取り困難症は、耳の聞こえに問題がないにもかかわらず、言葉を聞き取ったり理解したりすることに難しさがある状態です。学校生活では、先生の話を聞き逃したり、口頭での指示が理解しにくかったりすることで、学習や友人とのコミュニケーションに影響することがあります。

なお、聞き取りにくさは耳や音を処理する働きだけが原因とは限りません。周囲の音の中から必要な声に注意を向けたり、その状態を保ったりする「注意機能」が関係している場合もあります。そのため、聞き取り困難症は一人ひとり原因や困りごとが異なり、それぞれに合った支援が大切です。

目次

聞き取り困難症の子どもによく見られる特徴

聞き取り困難症の子どもには、次のような特徴が見られることがあります。

  • 「もう一回言って」と聞き返すことが多い
  • 教室や体育館など、周囲が騒がしい場所では話が理解しにくい
  • 口頭だけの指示を覚えにくい
  • 聞き間違いや勘違いが多い
  • 長い説明になると内容が分からなくなる
  • 字幕がある動画の方が理解しやすい
  • 学校から帰ると疲れていることが多い

これらの様子は、「話を聞いていない」「やる気がない」ということではありません。聞き取ること自体に多くのエネルギーを使っているため、周囲からは気づかれにくい困りごとを抱えていることがあります。

周囲が気をつけたいこと

聞き取り困難症のある子どもは、少し環境を工夫するだけでも過ごしやすくなることがあります。

例えば、

  • 一度にたくさんの指示を伝えない
  • 静かな場所で説明する
  • 話す内容を短く区切る
  • 話しながら板書やメモ、イラストも活用する
  • 「分かった?」ではなく、「何をするか教えてくれる?」と確認する

といった工夫が役立ちます。

大切なのは、「聞けない子」と考えるのではなく、「聞き取りにくさがある子」という視点で関わることです。

聞き取り困難症の子どもにおすすめの学習法

聞き取り困難症の子どもは、「聞く」ことだけに頼らない学習方法を取り入れることで、理解しやすくなることがあります。

1.文字で確認できる環境をつくる

口頭で説明を聞くだけでは理解しにくい子どもでも、文字や図があると内容を整理しやすくなります。

授業では板書やプリントを活用し、家庭ではメモを書いたり、動画は字幕を表示したりすることで、学習への負担を減らすことができます。

2.指示は一つずつ伝える

「教科書を出して、20ページを開いて、問題を解いてね」と一度に伝えるよりも、

  • 教科書を出す
  • 20ページを開く
  • 問題を解く

というように、一つずつ伝える方が理解しやすくなります。

「できたら次へ」という進め方は、安心して取り組める子どもも多くいます。

3.見る・書く・体験する学習を増やす

子どもによっては、「聞く」よりも「見る」「書く」「実際にやってみる」方が理解しやすいことがあります。

例えば、

  • イラストや図でまとめる
  • ノートに書きながら覚える
  • 実験や工作を通して学ぶ
  • プロジェクト学習で体験する

など、さまざまな方法を取り入れることで、学びが定着しやすくなります。

4.静かな環境で学習する

テレビや周囲の話し声があると、必要な音に集中しづらくなることがあります。

家庭学習では、できるだけ静かな場所を選び、周囲の音を減らすだけでも集中しやすくなる場合があります。

5.ICTを活用する

近年は、学習をサポートするICTも充実しています。

  • 字幕付き動画
  • 音声を文字に変換するアプリ
  • タブレット教材
  • デジタルノート

などを活用すると、「聞き取れなかった」という不安が減り、自分のペースで学習を進めやすくなります。

6.その子に合った学び方を見つける

聞き取り困難症があるからといって、全員に同じ学習方法が合うわけではありません。

「読む方が理解しやすい」「体験すると覚えやすい」「イラストがあると分かりやすい」など、得意な学び方は一人ひとり異なります。

苦手な部分だけに目を向けるのではなく、得意な方法を活かした学習を取り入れることが、自信や学習意欲につながります。

まとめ

聞き取り困難症の子どもは、「聞こえているのに理解しづらい」という困りごとを抱えていることがあります。

そのため、「もっとしっかり聞こう」と伝えるよりも、文字やイラスト、体験など複数の方法で学べる環境を整えることが大切です。

また、聞き取りにくさには、音の処理だけでなく注意機能が関係している場合もあります。

「話を聞いていないように見える子ども」の中には、実は注意機能が影響しているケースも少なくありません。

次回は、子どもの学習や生活に大きく関わる「注意機能」とは何か、どのような困りごとにつながるのかを分かりやすく解説します。

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